兄は、1mmも文句を言わなかった

喉の痛みがなかなか治らず、いつもの自然療法の先生のところへ行ってきました。ついでに、一年ほど肩の痛みに悩んでいる兄も連れて行くことにしました。

先生からは「病院で処方されるワクチンしか効かない」と言われつつも、私の症状に合う海人草をいただきました。兄も、からだに合う市販薬のほかに、痛みをやわらげるというツワブキをもらい、二人とも気分よく車に乗り込みました。

高速を20分ほど走らせたところで、兄がふと「俺のスマホは?」と聞いてきました。「私の鞄に入れたよ」と中を確認すると、兄のスマホはあるのに、自分のスマホがありません。兄に電話を鳴らしてもらっても、何も聞こえません。

あ、先生の家に置いてきたんだ💦

そう気づいて、高速を降りて引き返しました。ところが、先生の家にもありません。車の中に落ちたのかと思って探しても、見当たらない。ふとドアポケットの中を探ってみると、横になって隠れるように挟まっていました。マナーモードにしていたので、車の振動で気づけなかったのです。無意識のうちに、自分でそこにしまい込んでいたのでした。

「ごめんね、お騒がせして」

兄は早く帰りたがっているのを知っていたので、せめてものお詫びにと、コンビニでアイスを買いました。すると兄から返ってきたのは、

「ありがと」の一言。

文句のひとつも言われるだろうと思っていたのに、まさかのお礼に、拍子抜けしました。

再び高速に乗り、途中から一般道へ。ゴールデンウィークで渋滞している国道を避けて、何度も通ったことのある農道を選びました。ナビもいらないだろうと油断していたのですが、走っても走っても見慣れない景色ばかりです。

明らかに、道を間違えていました😭

兄が「伯太に向かってる、広瀬だろ?」と言い、ナビで方向修正。帰りはさらに遅くなりましたが、それでも兄は、何も文句を言いませんでした。

スーパーに寄り、私の自宅にも寄り、父の待つ実家に着いたのは19時過ぎ。結局、その日一日、兄は一度も文句を言いませんでした。

その夜、ふと考えました。なぜ私は、「文句を言われる」と思い込んでいたのだろう。

スマホの置き場所をちゃんと確認しなかった。道も間違えた。時間も無駄にした。文句を言われても仕方のない一日だった、と自分では思っていました。

でも、これは兄に文句を言われるかどうかという話ではなく、自分が自分に文句を言っていただけなんじゃないか。

自分の中にある「責める気持ち」を、きっと兄も同じように感じているはず。そう勝手に想像していただけだったのかもしれません。

なぜなら、私は兄から1mmも文句を言われなかったのですから。

そこにあったのは、こんな思い込みでした。

「ちゃんとしなければならない」
「間違えてはならない」
「時間を無駄にしてはならない」

そんな思い込みが、今回の何気ない出来事をきっかけに、浮かび上がってきたのだと思います。

ちゃんとしていたいし、間違えたくもない。時間も無駄にしたくない。その気持ち自体は、悪いものではありません

けれど、その思いが強すぎると、自分で自分を縛ってしまいます。

そのことに気づけたという意味で、大切な時間を過ごさせてもらいました。

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