「あんたは、いい子だね」噛みしめるように母は言った

アメブロを書いていた頃の記事を読み直していました。
母が亡くなる1年前、まだ元気にデイサービスに通っていた頃の母の言葉が、妙に心に残りました。

あの頃の感じ方と、今とでは何かが違います。
過去の出来事をもう一度振り返ることで、今の視点から見えることを整理してみたいと思います。

目次

母からのリクエスト

腕の骨折をきっかけに、リハビリがてらデイサービスに通い始めた母。

認知症も出てきて、週2~3日通うことになったある日、
母は、父が使う買い物袋を持ってきて、私に訴えました。

デイサービスでもう少し大きいカバンがよいと言われた。
このぐらいのサイズで、上にチャックがついているのがほしい、と。

チャックがついている、というのは、
中に入っているリハビリパンツやパットを人に見られたくないからです。
意識がはっきりしているときは、ハンカチでカバンの上部を覆っていました。

最初に思ったのは、母の気に入るカバンを見つけるのは難しいということ。
案外とおしゃれさんなのです。

そして、手が震えるのでチャックの扱いは無理。

ふと、私が以前作った木工用の前掛けやパンツの端切れがあるのを思い出しました。
母には、今度、出かけるときに買ってあげるからと話しましたが、
頭の片隅で自分で作れるんじゃないか、と思いました。

バッグを手作りする

翌日、図書館に行き、バッグの作り方の本を2冊選んで借りました。
家に帰って、余り布のデニム素材を使うデザインを探します。
布地の長さが足りず、他の布地も足さないといけませんが、どうもしっくりこない。

デザインが気に入らないと、母は使わなくなると思いました。
根が正直な人だから。
母が使わなくなったら、自分が使うことになるだろうな、なんて思っていました。
(これは、後日、私仕様のフラダンス用バッグになりました。)

結局、綿のデザインのものをデニムに替え、
布が足りない裏地やきんちゃく部分は綿で継ぎはぎをすることに。
これで、余り布も有効利用!

布を裁断するのはけっこう面倒ですが、ミシンの段階になると形ができて楽しくなっていきます。
最後はネームタグを張り付けて終了。
さて、喜んでくれるかな、どうかな。

母はひと言、噛みしめるように言った

夕方、デイサービスから帰った母の前で、バッグをひらひらさせ、気づくまで待ちました。

父が最初に気づき、「あ、上等なやつだ」。
口裏を合わせたわけではありません。父にも黙っていました。

そのうち母が気づいたので、自分で作ったことを伝えました。

すると、バッグを手に持ち、ひと言。
「あんたは、いい子だね」

噛みしめるように出た言葉でした。

私は静かな衝撃を味わった

「いい子」という言葉は、これまでも、まわりから言われたことがあったように思います。
けれど、私自身がずっと覚えていたのは、母からの「手のかからない子ども」という言葉でした。

母に、私は小さい頃はどんな子どもだったかを何度か聞いたことがありました。
その度に、母はこの言葉を言いました。

「本当に、手のかからない子どもだった」

正直な気持ちだったと思います。
兄たちにいろいろと手がかかっていたのです。
それでも、あまり嬉しくない言葉でした。

だから、今回、「あんたは、いい子だね」と真正面から言われて、
ちょっとの間、フリーズしました。

「い、いや、私、今までもいい子だったんですけど」(心の声です)

毎晩、実家に行き、夕食を作って一緒に食べ、お風呂に入れて、冷えた足のマッサージをする。
すると、いつもベッドから「ありがとう」と言って送り出してくれました。

しかし、あの「あんたは、いい子だね」は何か違うものを感じました。

「あんたは、いい子だね」から感じたこと

あの時の母の言葉、「あんたは、いい子だね。」は、今でも私の心に刻まれています。

母がどういう気持ちで言ったのかは分かりません。

ただ、私が受け取ったのは、
「バッグを作ってくれて、ありがとう」という感謝の気持ちというよりも、
母が感じている何かあたたかいもの、「愛」と呼んでもいいようなもの。
それを分かち合わせてもらった感じがしました。

安心感と安らぎ。慈しみ。

だから、むしろありがたかったのは、私の方でした。

あたたかい愛のエネルギーを共に感じさせてもらえたような体験。
こういう瞬間を、どうやったら増やしていけるのかなあ。
まずは、自分の在り方になるのかな、と思いました。

過去の出来事を、今の自分の視点でもう一度見直してみる。
一人の時間を持ち、ゆっくり思いを巡らしてみると、またまた新たな発見があるかもしれません。
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