アト゜イとの出会い
人生には、たくさんの出会いがあります。親から始まり、家族、親戚、友達、先生、仲間、その中で、もう会うことはないかもしれないけれど、どこか心に残る人がいます。
私にとっては、アイヌの古老、アト゜イがそのうちの一人です。(アト゜イはアトゥイと読みます。)
2020年、ちょうどコロナ騒動が始まった年、北海道の企画ツアーで民宿丸木舟に泊まり、そこの経営者であるアト゜イの講話を聴きました。
アト゜イは多彩な才能の持ち主で、アイヌ詩曲舞踊団モシリを率いる音楽家であり、若い頃は世界を放浪し、国連でも「アイヌの世界観」を講演をなさった方です。
事前に著作『アト゜イ・俺は魂をデザインする』を読んでいた私は、 「なぜ、科学技術文明の将来をそんなに楽観視できるのか」と素朴な質問を投げかけました。
ここで、アト゜イのスイッチが入りました。 今は亡き哲学者の梅原猛さんも同じ質問をしたそうです。
アト゜イは、「科学技術が生まれてからの歴史はまだ浅いから」、と答えました。自分は人間の可能性を信じる、そんなようなことも言っていました。
正直、分かるような分からないような。
ともかく、この人は時間軸の捉え方が長く、とても楽観的な人なんだなあ、 そして、人間に対する絶対的な肯定があるのかなあ、と思った覚えがあります。
人間の「魂」への信頼感でしょうか。
「お前は、第三の哲学をつくるんだ」
アト゜イは、なぜか私に興味を持ったようでした。
「アイヌには、憑神様という考え方がある。 お前の憑神様と俺の憑神様が交流しているんだなあ。 お前は俺の(女の)好みではないから」と😅
その後、彼が相談役であり、司祭を務める絶滅種鎮魂際に何年も参加することになりました。この貴重な体験は、また別のブログに書きたいと思います。
初めて会ったこの日、アト゜イは私の目を見据えてこう語りました。
「お前は、カムイに呼ばれたんだ」
「お前は、『第三の哲学』をつくるんだ。学問としての哲学ではなく、日常生活の肉体を通しての哲学をしなさい。」
彼にとっての哲学とは、「一人一人の人間そして集団が、日常生活の中で何を考え、どのように行動するのか、自ら意思決定をする規範となるもの」。
アト゜イの別名は「サンニョ・アイノ」。アイヌ語で、考える人。さすが、哲学をする人なわけです。
その時、アト゜イの熱い思いは受け取ったものの、 私にできるかなあ、そんな器じゃないよなあと思っていました。
ウレシパモシリ
アト゜イとの出会いから6年の月日が流れました。その間、Uターンして勤めた会社を辞め、IAMの学びや実践が始まり、一軒家で自然とともに暮らす日々を送っています。
今回、新しいブログをスタートさせるに当たり、アト゜イのことを思い出しました。アト゜イの考える、第一、第二、第三の哲学とは、
・第一の哲学(399万年の時間軸)とは、自然と上手に共生した世界。
・第二の哲学(一万年の時間軸)とは、科学技術文明に結び付いた人間中心の世界。行き詰まりを迎えている。
・第三の哲学とは、地球環境と科学技術文明が融合した未来世界。
人類を400万年という長い時間軸の中で見れば、牧畜や農耕から始まる科学技術文明はあっという間の出来事です。
私が生まれてからでさえ、リモコンテレビ、エアコン、全自動洗濯機といった家電製品はもとより、スマホ、パソコン、インターネット、SNS、ユーチューブ、そしてAIの普及。
一方、森林伐採は進み、気候は変動し、世界規模の感染症が蔓延する。月や火星への旅行ももう夢物語ではありません。科学技術はまさに日進月歩。この瞬間にも進んでいる。
その巨大な渦の中、私たちはどんな選択をしていけるのでしょうか。
アイヌ語に「ウレシパモシリ」という言葉があります。「互いに育てあう静かなる大地」、つまり地球のことです。
人間も生きている、動物も植物も鉱物も、地球も生きている。 人間だけでは決して生きていけない。 互いに共生し、育て合っているという事実。
もしそれを忘れてしまったら、 第三の哲学「地球環境と科学技術の融合」へは当然進めません。 地球もろとも滅びてしまいます。
『魂の気品』を高める
アト゜イの著作の中には、何度も「魂」という言葉が出てきます。「芸術を通して『魂の気品』を高める」とか。
そう言えば、のちに絶滅種鎮魂祭のモシリの舞台で語りをやらせてもらった際、アト゜イから檄が飛びました。
「自分の魂に語り掛けるんだ。自分の魂を喜ばせろ!」
この「魂」とは、「本来の自分」、「本質の自分」を意味すると思います。これまで身につけてきた余計な思考や感情をそぎ落とした先にあるもの。唯一無二の「真我」。
このブログが、「本質の自分」、「真我」に近づく、「日常生活の肉体を通しての哲学」になるといいなあと思っています。
※追記※
先日、東京で合った友人にアト゜イのことを話したら、名前を知っていました。彼の友人が、アト゜イに会いに行ったそうです。
北の大地で、今もアト゜イは第三の哲学を追いかけている。私も続こうと思います。


コメント