手術はしないと決めていた94歳の父が、「もう少し生きたい」と言った日

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手術はしないと決めていた父

半年以上前から、父は鼠径部ヘルニア(脱腸)を患っています。

医師からは「手術をしないと治らない」と言われていました。
けれど父は高齢で、糖尿病をはじめ、いくつかの病気もあります。
本人は手術をしないと決め、信頼する自然療法のS先生にも「脱腸の手術はしない」と宣言していました。

ところが、おなかから飛び出す腸は、だんだん大きくなっていきました。
さすがに不安になったのでしょう。
父は「病院に相談したい」と言うようになりました。

なぜか一気に準備が整う

ある日、父は「来週、病院に行く」と言いました。
その口ぶりから、すでに手術を覚悟していることが伝わってきました。

それなら早いほうがいい。

その朝、病院に電話をして、翌日の予約を取りました。

実はちょうどその朝、S先生から「明日から三日間、海外に行く」とLINEが届いていました。

先生、何かカンでも働いて、予定を連絡されてきた?
しかし、とりあえず病院に行くことも決まったし、特に急ぎの用はない。

と思ったのもつかの間。
昼食後、父は今度は胃の痛みを訴えてきました。脱腸とは違う場所です。

先生が海外に行く前の、今日なら会える。
胃も診てもらえるし、手術のことも父の口から直接伝えられる。
そう考えて、父をS先生のところへ連れて行きました。

先生は丁寧に胃のまわりを確認して、手当の方法を教えてくださいました。
父がおもむろに、手術をすることになりそうだと話すと、先生も「それがいいでしょうねえ」と。

父は、ほっとしていました。

「もう少し、生きたいんです」

外科の担当は、初めてお会いする女医さんでした。
サバサバした方で、話が早い。
父も覚悟していたので、その場で手術の日程が決まりました。

そこで、父は先生に、少し笑みを浮かべて言いました。

「もう少し、生きたいんです。」

以前は、手術でからだに負担がかかり、それまでの暮らしができなくなることを恐れていたのだと思います。
これまで何度も、からだにメスを入れてきました。

あと3か月で満95歳。どんな気持ちで言ったのでしょうか。

山の上の古民家カフェで、父とランチ

お天気もよかったので、病院の帰りに、前から連れて行きたかったお店へ行きました。
ちょうど、眺めのよい窓際の席が空いていました。

父が頼んだのは岩魚定食。私は塩麴の豚ロース定食です。
私、イワナと読めませんでした😅

ご飯は、かまどご飯・玄米の豆ご飯・梅酢ご飯から選べて、ハーフ&ハーフもできます。
父はかまどご飯と梅酢ご飯、私は玄米の豆ご飯と梅酢ご飯にしました。
汁物は、団子汁が好きな父に合わせて、二人とも団子汁です。

父には多い量でしたが、ゆっくりゆっくり口に運んでいました。
手術に備えて、体力をつけておきたかったのだと思います。

食事をしながら、父は言いました。
もうちょっと長生きして、同居する兄を助けてやりたい、と。

それは兄だけでないことは、よく分かります。

女医さんに話した、「もう少し、生きたいんです。」は、私たち兄妹のため。

若い頃は、過保護な父や母に反発したこともありました。
今でも、頑固な父に意見することが、多々あります。

けれど、父の子どもたちへの想いには、自然と頭が下がります。
お父さん、ありがとう。

一緒に美味しいものを食べようね。心が澄みわたるような、素敵な景色を眺めようね。

美味しいものを大事な人と一緒に味わう。素敵な風景を一緒に眺める。
ときに文句を言うこともあるけれど、当たり前のことが当たり前でなくなる日が来ることを予感しながら、父と過ごす時間を大切に過ごしたい。そんなふうに思っています。
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